11月14日は世界糖尿病デー

国際連合(国連)は11月14日を世界糖尿病デーと決めました。2006年12月20日に、国連は糖尿病の全世界的脅威を認知する決議を総会議で採択するとともに、11月14日を世界糖尿病デーに指定しました。11月14日という日は、糖尿病を語るうえで欠かすことのできないインスリンという体内物質を発見したフレデリック・バンディング博士の誕生日にあたります。

国際糖尿病連合と世界保健機構はこれまでも糖尿病の拡大に警鐘を鳴らしていましたが、想像をはるかに上回るスピードで地域を問わず患者が増え続けるという現実を突きつけられ、医療機関だけの取り組みに限界を感じたのです。11月14日を世界糖尿病デーと決めたように、国連が特定の日にちを特定の病気のために指定したのは、12月1日の世界エイズデーに次ぎ2番目です。

指定後初めて迎えた2007年11月14日には、東京タワーや大阪の通天閣、海外ではギリシアのパルテノン宮殿、フランスのエッフェル塔など世界各地の名所が、世界糖尿病デーのシンボルカラーである青色にライトアップされました。この光の中で、予防や治療、療養を呼びかける活動が展開されたのです。

毎年11月14日前後はさまざまな形で糖尿病に触れることが多くなるでしょう。11月14日は一年に一度ですが、せめてこの日だけでも病気を意識したうえで、発症に密接なつながりがあるという日ごろの生活習慣を見直してみてもいいのではないでしょうか。

急増する糖尿病の患者数

糖尿病の患者数が世界的に急増しているという実情は、医療機関のみならず国連までもが危機感を募らせています。専門機関は、全世界における糖尿病の患者数を2万人弱とみていて、これは全成人人口の5~6%に当たります。そして2030年までにはこの数字が倍増すると予測しているのです。中でもアジアとアフリカの糖尿病患者数が急激な伸びを示しており、日本でも40歳以上の3人に1人が糖尿病患者もしくは予備軍と見られています。

以前はこれほど糖尿病という病名を耳にすることがなかったように思いませんか? これは糖尿病という病気が生活習慣と大きく関わっていることがわかってきてからですよね。糖尿病の患者数の増加要因は、欧米型の生活様式が広まったことや運動不足、暴飲暴食といった食生活の乱れ、そしてストレスなどが挙げられます。今後、経済発展を遂げるとみられる地域では、糖尿病の患者数も見過ごせないファクターとなるでしょう。

糖尿病は血液を採取し、血糖値を測定するという比較的手軽な方法で診断がつきますが、そもそも健康診断を受けていないという人も多く、実際に通院して治療を受けている糖尿病の患者数は全体の半分程度ではないかとみられています。一度かかってしまうと完治が難しい病気ですが、予防することができる病気です。定期的に自分の体をチェックすることが糖尿病の患者数を抑えるために重要な課題といえます。

糖尿病とインスリン

糖尿病のキーとなるのがインスリンです。糖尿病という病気は、通常だと一定の数値内で収まっている血液中のブドウ糖濃度、いわゆる血糖値が何らかの理由で病的に高まる症状をいいます。ブドウ糖は人間の体内各器官にとって大切なエネルギー源である一方、必要以上に濃くなると有害物質になってしまいます。このとき活躍するのがインスリンという体内物質です。

インスリンとは、すい臓に存在するランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、主に米やパンなど炭水化物の代謝を調整しています。人間の体というのはどんな精密機械よりもよくできていて、炭水化物に含まれる糖質の働きはこのホルモンの絶妙な働きによって成り立っているのですが、血糖が上昇したときの調整能力つまりインスリンの働きが弱くなってしまい、増加した糖が腎臓から尿として排出されてしまうのです。

患者の約9割を占めるといわれているのが「インスリン非依存型糖尿病」(2型)です。この2型の患者の中でも、もともとインスリンが効きづらい体質である場合とインスリンの分泌が低下した場合とがあります。体質的な問題だとすれば、やせている人でも罹患します。一方、分泌が低下するというのは、カロリーの過剰摂取といった問題ある食生活や運動不足による肥満との因果関係が研究でわかってきています。糖尿病が高血圧、高脂血症と並んで生活習慣病と呼ばれる所以がここにあります。

糖尿病1型とは

糖尿病には原因によって大きく分けただけでも1型、2型というようにタイプがあります。さらに遺伝子異常によるものや他臓器疾患が原因で発症するタイプ、妊娠中に症状がみられるタイプなど、実は複数存在します。そのため、症候群とするべきだという専門家もいるほどです。

1型というのは「インスリン依存型糖尿病」とも呼ばれ、ほとんどの患者が20歳未満で発症することから「小児糖尿病」ともいわれています。1型の症状は、何らかのウイルス感染が引き金となって免疫システムが誤作動を起こし、すい臓にあるランゲルハンス島のβ細胞を激減、もしくは死滅させてしまうものです。そうすると血糖値の調整に不可欠なインスリンが分泌されず、絶対的に欠乏する状態になります。そのことは血糖値の異常な増加につながり、ひいては生命の危機に直面します。

そのため、1型患者は意識的に血糖をコントロールする必要があるのです。現在のところ、1型の糖尿病に対しては飲み薬がほとんど効力を望めないとされ、注射や携帯ポンプによる一日に数回のインスリン投与が欠かせません。1型糖尿病は発症すると生涯続きますが、血糖値の管理さえうまくできれば問題なく日常生活を送ることができるといいます。なにぶん病患者はほとんどが成人前の子供だという病気ですので、闘病生活には周囲の理解や協力も大切なことです。

糖尿病で恐い合併症

糖尿病は病気そのものもさることながら、合併症が恐いという話をよく聞きませんか? 合併症というのは、その病気がもとになって起こる別の病気や症状のことです。糖尿病は血糖コントロールをしないと、発症から10~15年で合併症が出始めるといわれています。

糖尿病における3大合併症といえば神経障害、網膜症、腎症です。神経障害は合併症の中で最も早く現れる症状で、手足がしびれたり痛みに鈍くなったり、胃腸の不快感を得るようになります。網膜症は目の網膜に集中している毛細血管がダメージを受け、視力が弱くなったり白内障を患ったり、最悪の場合は失明に至ります。腎症は腎臓の血管が支障をきたして機能が低下してしまうもので、進行すると人工透析が必要になります。

糖尿病の合併症は、いずれも血液が関係するものです。血糖値が高くなると血管が狭くなったり硬くなったりします。この状態が長く続くと血液の流れが悪くなり、とくに血管が多く集中している心臓や脳に与える影響は大きくなります。ですから、心筋梗塞や脳梗塞も見られるようになるのです。

糖尿病と診断された場合は、なんといっても合併症の予防が重要です。逆に、初期段階での自覚症状があまりないので、合併症を発症してから糖尿病に気がつくケースも少なくありません。やはり定期的に健康診断を受けることが最大の防御といえるでしょう。